辞職と合意退職の違い
2026.10.30
従業員が退職される際に、会社に退職願、または退職届を提出して、退職となる流れがありますが、今回は、「辞職」と「合意退職」の違いについて、ご説明させていただきます。
辞職と合意退職は、いずれも自己都合などで退職に至る点では共通していますが、「労働者の一方的な意思表示で成立するか(会社側の承諾が必要か)」という法的性質が根本から異なります。また、辞職における無期雇用契約と有期雇用契約の取り扱いにも民法・労働基準法上の明確な違いがあります。
1. 辞職と合意退職の違い
退職のプロセスにおいて「会社の承諾」が必要かどうかが最大の分岐点です。
| 項目 | 辞職 | 合意退職 | |
| 法的性質 | 労働者による一方的な契約解除の意思表示(形成権の行使) | 労働者と使用者の双方の合意による契約終了 | |
| 会社の承諾 | 不要(法律の要件を満たせば会社の合否に関わらず成立) | 必要(会社が申出を承諾して初めて成立) | |
| 撤回の可否 | 原則として撤回不可(意思表示が使用者に到達した時点で拘束力発生) | 会社が承諾の通知を出す前であれば、原則として撤回可能 | |
| 典型的な書面 | 「退職届」「辞任届」(「〜をもってお辞めします」) | 「退職願」(「〜を理由に退職したくお願い申し上げます」) | |
| 実務上の使われ方 | 会社が退職を拒否・引き止める場合に一方的に辞めるケース | 実務上最も一般的。退職願を提出し、会社が受理・決裁するケース |
2. 辞職における「無期雇用」と「有期雇用」の取り扱いの違い
民法上、契約期間の定めの有無によって辞職(一方的解約)のルールが大きく異なります。
無期雇用契約(正社員など)
期間の定めがない場合、労働者には強い「退職の自由」が保障されています。
○民法第627条第1項の原則:
・ 理由の有無を問わず、いつでも解約の申入れができます。
・申入れの日から原則2週間を経過した時に雇用契約が終了します(会社の承諾は不要)。
○給与形態による例外(民法627条2項・3項):
・ 完全月給制(欠勤控除がない固定給等)の場合、当期の前半に申し入れることで、当期末に退職となります(例:末日締めの場合、月前半に出せば当月末退職、後半に出すと翌月末退職)。ただし実務上は、2週間ルールで運用されるケースが大半です。
○就業規則の「〇ヶ月前告知」との関係:
・ 就業規則に「退職は〇ヶ月前までに申し出ること」等の規定があっても、判例・通説上は民法第627条(2週間ルール)が優先されます。
有期雇用契約(契約社員・パートなど)
あらかじめ契約期間を定めて契約しているため、原則として期間満了まで働く拘束力が発生します。
○民法第628条(やむを得ない事由):
・ 契約期間の途中で辞めるには、「やむを得ない事由」が必要です。
・ 例:自身の病気・怪我、家族の介護、労働条件が契約時と著しく異なる場合、配偶者の転勤など。
・ 「やむを得ない事由」に該当しない一方的退職により会社に具体的な損害を与えた場合、損害賠償請求の対象となり得ます(ただし、実務上一般労働者への賠償請求が認められるハードルは極めて高いです)。
○労働基準法第137条(1年経過後の自由退職):
・ 契約期間が1年を超える契約の場合、契約開始日から1年を経過した日以降は、いつでも自由に退職を申し出ることができます(この場合、「やむを得ない事由」は不要です)。
・ ※労働基準法第14条第1項各号に定める「専門的知識を有する労働者や満60歳以上の特例(上限5年)」は除きます
比較まとめ
• 無期雇用: いつでも理由を問わず辞職可能。原則として申出から2週間で成立。
• 有期雇用(1年未満): 原則として「やむを得ない事由」がない限り中途解約不可。
• 有期雇用(1年経過後): 労基法137条により、やむを得ない事由がなくても自由に退職可能
まとめ
今回は「辞職」と「合意退職」について、記載させていただきました。
俗にいう「円満退職」と呼ばれるケースは、就業規則に規定に基づく合意退職であるのではないかと考えます。いずれにしても、会社・従業員ともに退職に関する正しい知識を持ち、相手に対する思いやりをもって手続きを進めていくことが大切です。
免責事項
※本記事は執筆時点における一般的な情報提供を目的として作成されたものであり、個別具体的な労務トラブルや法的判断を保証するものではありません。個別の労務問題については、社会保険労務士または弁護士等の専門家にご相談ください。