最低賃金改定と固定残業手当の関係性
2025年の最低賃金改定の目安が8月初旬に厚生労働省から発表されました。
今回は、最低賃金改定と固定残業手当の関係性について、記載させていただきます。
過去最高の上がり幅
2025年10月からの各都道府県の最低賃金の改定について、中央最低賃金審議会において8月4日に答申がだされました。各都道府県の引上げ額は、ランク毎にAランク63円、Bランク63円、Cランク64円となっております。(以下、厚生労働省のHPご参照)
厚生労働省:『令和7年度地域別最低賃金額改定の目安について』
今回の改定額(63円)は、この目安制度が昭和53年に始まってから最高額とのことです。
今後は、各地方最低賃金審議会で、この答申を参考にしつつ、決定されていくこととなります。
最低賃金改定と固定残業手当と関係性
最低賃金は時給により定められておりますので、単純に時給の給与形態なら時給にその金額を加算すれば、よいこととなります。
例えば、東京都でしたら、アップする金額は以下のとおりです。
2024年 1,163円
2025年 1,226円(+63円)
さて、月給の場合ですが、固定残業手当を支給している場合は、注意が必要です。
例えば、基本給192,000円、固定残業手当45,000円(30時間相当分)、その他諸手当なし。合計237,000円
また労働時間について以下の設定とします。
年間所定労働日数240日、休日125日、1日所定労働時間8時間とすると、
年間所定労働時間240時間 × 8時間 = 1,920時間
年間合計所定労働時価1,920時間 ÷ 12カ月 = 平均所定労働時間160時間
基本給 192,000円 ÷ 160時間 = 時給1,200円
固定残業手当 45,000円(1,200円 × 1.25倍 × 30時間)
これが、令和7年10月1日以降になりますと、最低賃金1,226円となりますので、
基本給における時給単価を1,200円 ⇒ 1,226円とする必要があります。
最低賃金改定後、基本給1,226円 × 160時間 = 196,160円
また、固定残業手当ですが、30時間分を支払うとした場合は、以下のとおりとなります。
1,226円 × 1.25倍 × 30時間 = 45,975円
よって、基本給と固定残業手当の両方をアップすると、
改定後基本給 196,160円
改定後固定残業手当 45,975円 合計242,135円(+5,135円)
このように、今まで最低賃金の改定に関係なかった場合でも、改定後の最低賃金以上になっていない場合には、少なくとも基本給相当分の時給単価は、最低賃金以上となっていなければならないため、注意が必要です。
特に最低賃金ギリギリの設定だった場合には、仮に月の平均所定労働時間160時間だった場合は、月/10,080円(@63円 × 160時間)の昇給が必要となります。
以下、以前にブログにも上げましたが、最低賃金についておさらいです。
最低賃金とは
最低賃金法により定められている法律でして、法の第1条(目的)には、
「賃金の低廉な労働者について、賃金の最低額を保障することにより、労働条件の改善を図り、もつて、労働者の生活の安定、労働力の質的向上及び事業の公正な競争の確保に資するとともに、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」と定められており、改定された最低賃金額を支払わない場合は、最低賃金法違反となり、罰則に50万円以内の罰金に処すると定められております。
まとめ
最低賃金の改定額が、過去最高額とのことですが、中小企業にとっては、人手不足の中での人件費の増加、さらに物価高によりコストもアップしている状況の中で、一段と厳しい状況となるのでないかと思われます。
最低賃金、固定残業手当、賃金制度等、お困りの経営者様がいらっしゃいましたら、お気軽にお問い合わせください。