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昨今の労働基準監督署の調査の概要

ある日、突然、労働基準監督署の監督官が企業に訪問することがあります。
「○○労働基準監督署です。就業規則、出勤簿、賃金台帳、その他必要な書類を見せてください。」
これは「臨検」といわれる労働準監督署の監督官が行う調査になります。
一度、来訪すると、調査に1~2時間くらいは要します。労働者数が多いときや、法違反が多く確認される時には3時間以上の時間を、掛けることもあります。
では、どのような目的のために調査しているのでしょうか。

  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 最低賃金法

※その他関連する施行規則等

調査の目的としては、主にこの3つの法律について、順守しているか、違反行為がないかを確認、違反が確認された場合は、「是正勧告書」や「指導票」を交付され期日までに是正改善を求められます。
この是正改善に応じない場合には、最悪の場合、書類送検されることありえますので、十分な注意が必要です。

実際にはどのように調査は行われているのでしょうか?
よく提出を求められる具体的な書類は、以下のとおりです。

①企業のパンフレット
②組織図
③就業規則(本則及び賃金規則等)
④労働条件通知書、雇用契約書等労働条件を明示した書類
⑤労働者名簿
⑥労使協定等
⑦出勤簿等、労働時間の記録
⑧賃金台帳
⑨年次有給休暇の取得管理簿
⑩健康診断の実施結果記録、個人票
⑪安全衛生管理の記録
⑫過重労働による健康障害防止に関する書類
⑬メンタルヘルス対策の取り組み状況がわかる書類
⑭その他調査の過程により追加する場合あり
※一部は提出を求められないものもあります。

またその他、労働基準監督署によっては、調査票のような書式に会社の情報の記載の上、提出を求められることもあります。

提出書類の内容を確認(現認)しながら、法を違反していなのかを判断されます。
以下は参考までですが、よく違反として勧告される内容は以下のとおりです。

・労働基準法 第24条(賃金)
いわゆる未払い賃金についてです。具体的には、残業手当の計算方法が適切でなかったり、そもそも残業手当を支払っていなかったり、親睦会費や旅行積立金を賃金から控除しているのに、「賃金控除の労使協定」が締結されていない等

・労働基準法第36条(時間外及び休日労働の労働)
「時間外労働、休日労働に関する労使協定」についての違反です。
労使協定を締結、監督署への届出がされていない。労使協定により締結した限度時間を超えて労働させている。などです。なお、時間外労働及び休日労働の合計時間が、1カ月100時間超や2カ月ないし6カ月の平均が80時間超の状況の場合には、「長時間労働による健康障害防止にについて」を交付され改善措置を講じることを求められます。

・労働基準法第38条の3
専門業務型裁量労働制の労使協定を締結、届出していないにも拘わらず、専門業務型裁量労働制を運用してしまっている等

・労働基準法第39条(年次有給休暇)
年次有給休暇を付与していない、労働者から請求されても与えていない。
基準日(予め決めた年休付与日等)から1年間で5日以上、消化させていない等

・労働基準法第89条(作成及び届出義務)
常時使用する労働者が10人以上にもかかわらず「就業規則の作成届出」をしていない等

・労働安全衛生法第66条(健康診断)
労働者に1年に1回定期健康診断を受診させていない等

・労働安全衛生法第66条の4(健康診断の結果についての医師等からの意見聴取)
労働者に1年に1回定期健康診断を受診させた結果、要所見なのだが医師の意見聴取を行っていない。

・最低賃金法第4条(最低賃金の効力)
都道府県毎に定める1時間当りの最低賃金以上の賃金を支払っていない。

是正勧告書を交付された場合は、違反行為について速やかに是正改善し、「是正改善報告書」を労働基準監督署に提出しなければなりません。

なお、「臨検」以外でも、労働基準監督署に企業が出頭する「労働条件実態調査」や労働者の申告に基づく調査もあります。

労働基準監督署の調査となったときは、社会保険労務士に協力してもらうと、よりスムーズに調査が進むことが多いかと思います。

労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法などの法律の用語は専門的で、一般の方々には、馴染みが無い言葉も多く、労働基準監督官のお話している意味がわからないといったことは多く見受けられます。

このような時に、法律をわかりやすく説明した上で、監督官が何を指摘しているのかを伝える役割は、調査立ち合いにおける大きな役割だと感じております。
弊所では、調査の立ち合いから、是正改善報告に関する改善実務まで対応可能ですので、お困りの際はお問い合わせ頂ければ、何らかお役に立てるかと存じます。

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