育児時短就業給付とは
今回は、令和7年4月1日から雇用保険の改正により新たに開始される「育児時短就業給付」について、取り上げさせていただきます。
令和7年3月31日以前は、育児に関する雇用保険の給付は、「育児休業給付金」と「出生時育児休業給付金」、何れも休業することを前提とした給付のみでしたが、「育児時短就業給付」は、育児短時間勤務により勤務している場合に、育児短時間勤務開始時の賃金と比較して、一定以上低下している場合に、給付される新しい制度になります。
後段に厚生労働省のリーフレットの引用を記載いたしますが、給付できる場合の例を簡単に記載します。
受給するための要件
1.2歳未満の子を養育するために所定労働時間を短縮して就業する雇用保険の被保険者。
(短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者は除く)
2.育児休業給付を受給しており、復職後、その同一の子について育児短時間勤務を開始したこと、または、育児短時間勤務開始前2年間の内、12カ月以上、月に11日以上勤務(年次有給休暇も含みます)していたこと
1については、雇用保険に加入していて、育児短時間勤務(育児時短就業)で勤務している。
2は、育児休業給付をしていて、復帰後(14日以内に短時間勤務開始なら引き続きとして扱う)、育児短時間勤務で勤務している。または、休職など勤務していない期間がなく、欠勤も少なく、1年以上、通常通り勤務していれば、おおむね要件は満たすものであると考えます。なお、1年以内に退職されている場合で、その雇用保険被保険者期間について、ハローワークに「求職の申込み」を行っていない場合は、被保険者期間を合算することにより受給資格要件を満たすことが可能ですので、交付された離職票は大切に保管しておくことをお勧めいたします。
実際にいくら支給されるのか
例えば、育児休業開始前の給与が月給30万円の人が、育児短時間勤務により育児休業から復帰、1日8時間の所定労働時間を1日6時間に短縮した場合で見てみましょう。
育児短時間勤務で復帰される場合、ノーワーク・ノーペイの原則により以下のような按分計算
により給与変更するのが一般的です。
月給30万円 × 6時間 / 8時間 = 225,000円
この場合、300,000円 → 225,000円(75%)
育児短時間勤務前の75%で90%以下の給与のため、支給率は10%となります。
225,000円 × 10%= 22,500円 が給付されます。
実際の育児時短就業給付の申請手続きとしては、2カ月毎に申請いたしますので、
22,500円 × 2カ月=45,000円 が2カ月毎に給付されることになります。
育児短時間勤務が継続する場合、子の誕生日の前々日(2歳に達する日の前日)の属する月までが給付の対象期間となります。
※こちらはあくまでも支給の例となりますので、ご了承ください。90%以上の給与が支払われている場合には、支給率が変更されます。
※簡易リーフレットご参照
既に育児短時間勤務している場合は?
なお、令和7年4月1日前に既に育児短時間勤務で勤務されていて、2歳未満の子を養育している場合、令和7年4月1日に「育児時短就業」を開始したとみなして、受給資格要件と支給要件を満たした場合には給付を受けられることとなりますが、既に時短勤務している直近の6カ月の賃金、状況によっては、育児休業開始時賃金の70%の他、一番、高い金額でハローワークにより決定されることとなります。何れにしても事業主にもしくは専門家ご相談されることをお勧めいたします。
以下、厚生労働省 令和7年2月4日現在のリーフレット「育児時短就業給付の内容と支給申請手続き」の引用となります。ご参考頂ければ幸いです。
育児時短就業給付の支給対象者
1.受給資格
- 2歳未満の子を養育するために1週間あたりの所定労働時間を短縮して就業する雇用保険の被保険者であること
※被保険者とは、雇用保険の一般被保険者と高年齢被保険者(65歳に達した日以後)をいいます
- 育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き、同一の子について育児短時間勤務を開始したこと、または、育児短時間勤務開始前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は賃金の支払いの基礎となった時間数が80時間以上ある)完全月が12カ月以上あること
※「育児休業給付の対象となる育児休業から引き続き育児時短就業を開始したこと」とは、育児休業終了の翌日(復職日)から育児時短就業を開始する場合に加え、育児休業を終了した日と育児時短就業を開始した日の間が14日以内の場合をいいます。
※完全月とは、賃金起算日から賃金締切日まで1カ月間の期間があり、賃金支払基礎日数が11日以上ある月のこといいます。2.各月の支給要件
- 初日から末日まで続けて、被保険者である月
- 1週間当たりの所定労働時間を短縮して就業した期間がある月
- 初日から末日まで続けて、育児休業給付又は介護休業給付を受給していない月
- 高年齢雇用継続給付の受給対象となっていない月
3.支給対象となる時短就業
育児時短就業給付金の支給対象となる時短就業(育児時短就業)とは、2歳に満たない子を養育するために、被保険者からの申出に基づき、事業主が講じた1週間当たりの所定労働時間を短縮する措置をいいます。
※フレックスタイム制、変形労働時間制、裁量労働制、シフト制などの適用を受けている場合には、総労働時間が短縮されている場合は育児短時間就業として、取り扱うとされていますが、総労働時間や1週間の所定労働時間変わっていなかったりする場合には、時短就業の対象外となることもあるので、注意が必要です。支給対象期間
育児時短就業給付金は、原則として育児時短就業を開始した日の属する月から育児時短就業を終了した日の属する月までの各暦月について支給します。この各暦月のことを「支給対象月」といいます。ただし、次の①~④の日の属する月までが支給対象月となります。
①育児時短就業に係る子が2歳に達する日の前日
※「子が2歳に達する日」とは、2歳の誕生日の前日をいいます。
②産前産後休業、育児休業または介護休業を開始した日の前日
③育児時短就業に係る子とは別の子を養育するために育児時短就業を開始した日の前月末日
④子の死亡その他の事由により、子を養育しないこととなった支給額
(1)支給対象月に支払われた賃金額※1が、育児時短就業開始時賃金月額※2の90%以下の場合
児時短就業給付金の支給額 = 支給対象月に支払われた賃金額 × 10%
(2)支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の90%超~100%未満の場合
育児時短就業給付金の支給額 = 支給対象月に支払われた賃金額 × 調整後の支給率※3
(3)支給対象月に支払われた賃金額と、(1)又は(2)による支給額の合計額が支給限度額※4を超える場合
育児時短就業給付金の支給額 = 支給限度額- 支給対象月に支払われた賃金額育児時短就業給付金が支給されないケース
育児時短就業給付金は、次の①~③のとおり、育児時短就業の前後で賃金が減少していないと認められる場合や、一定の限度額に該当する場合には、支給されませんのでご注意ください。
①支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の100%以上の場合
支給対象月に支払われた賃金額が、育児時短就業開始時賃金月額の100%以上の場合は、育児時短就業の前後で賃金が減少していないものとして支給されません。
②支給対象月に支払われた賃金額が、支給限度額以上の場合
支給対象月に支払われた賃金額が、一定額以上の場合は、給付金が支給されなくなることがあり、このときの基準額を支給限度額といいます。このため、支給対象月に支払われた賃金額が、459,000円(2025(令和7)年7月31日までの額)以上の場合は支給されません。
③上記(1)~(3)による支給額が、最低限度額以下のとき
支給限度額とは逆に、算定された支給額が低額の場合は、給付金が支給されなくなることがあり、このときの基準額を最低限度額といいます。このため、上記(1)~(3)によって算定された支給額が、2,295円(2025(令和7)年7月31日までの額)以下の場合は支給されません。2025(令和7)年4月1日以前より時短就業を開始している場合の措置
育児時短就業給付金は、2025(令和7)年4月1日以後に育児時短就業を開始した方が対象となりますが、2025(令和7)年4月1日前より育児時短就業に相当する就業を行っている方については、2025(令和7)年4月1日から育児時短就業を開始した日とみなして受給資格・各月の支給要件(2頁参照)を満たす場合は、2025(令和7)年4月以降の各月を支給対象月として支給されます。
ただし、受給資格・各月の支給要件を満たす場合であっても、支給対象月に支払われた賃金額が、2025(令和7)年4月1日から育児時短就業を開始した日とみなして算定された育児時短就業開始時賃金月額より低下していない支給対象月は不支給となります。