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専門業務型裁量労働制の現状と改正見込み

専門業務型裁量労働制とは

 労働基準法第38条の3に定められ、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務につく労働者に対して、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。

なお、専門業務型裁量労働制が採用出来るのは、「厚生労働省令」および「厚生労働大臣告示」によって定められた業務19業種に限られています。

例えば、税理士業務が挙げられますが、税理士資格を持たない税理士補助業務を行う労働者に対して、裁量労働制を用いることは出来ません。

制度導入をするには?

制度の導入にあたっては、労使協定(様式第13号)に定められた項目を労働組合又は労働者の代表と書面による協定を行い、管轄の労働基準監督署に届出をする必要があります。

協定期間は、3年以内とすることが望ましいとされておりますが、実態にあわせて1年毎に協定が理想的と考えます。

また、協定書の届出まで行うことによって裁量労働時間制が有効となりますので、協定書を結んでいても未届けの場合、無効となります。

専門業務型裁量労働制の注意点

労働基準法第38条の3第1項第3号に「対象業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し、当該対象業務に従事する労働者に対し使用者が具体的な指示をしないこと。」とある通り、たとえ該当の19業種に含まれる業種の労働者であっても、まだ業務指示を受けなれば業務を進められないような労働者に裁量労働時間制を用いることは出来ません。

また、法定労働時間を超えた分は時間外労働となるので、例えば、みなし労働時間を9時間とした場合には、1時間分の割増賃金をあらかじめ労働者に払う必要があります。

専門業務型裁量労働制を導入するメリット・デメリット

企業側

メリット:給与の計算がしやすく、人件費の計画もしやすい、採用の際に、労働時間が自由なことが強みとなる

デメリット:労使協定及び届出等手続きの運用面の難しさ・長時間労働に繋がりやすいため、労働者の健康配慮に通常より注意しなければならない

労働者側

メリット:労働時間に捕らわれない自由な働き方が出来る

デメリット:長時間労働となる可能性がある・業務遂行の高い能力が求められる

今後の法改正予定

裁量労働時間制は、企業側・労働者側も上手く活用が出来れば、お互いにメリットのある制度ではありますが、長時間労働に繋がりやすく健康確保が難しい点や実態して本当に労働者に裁量権がある状態であるか問題視されています。

このことから、政府でも裁量労働時間制の見直しが検討されております。

令和4年7月検討会 参照:厚生労働省|これからの労働時間制度に関する検討会報告書

現行法検討案
対象労働者の範囲・要件19業種対象業務範囲の拡大のニーズ・社会変化に応じて検討する
また、将来的に年収の要件を設ける。
本人同意・同意の撤回・適用解除労働組合又は労働者の過半数代表との協定・企業は各従業員に、制度確実に説明した上で、本人同意を得ること。
・裁量労働時間制が実態として適切でない判断した場合、制度適用から外れることを明確化する。
・同意しなかった場合や同意撤回後の不利益取扱いの禁止。
業務量のコントロール等に通じた裁量の確保制度導入時に労使で定める制度の導入後の運用実態のチェックを行う。
健康・福祉確保措置労使協定で定める健康・福祉確保措置を、労働者の労働時間の状況に応じて実施。健康・福祉確保措置内容を充実させ、1つではなく複数の措置を適用させる。
労使委員会労使協定の締結に替えて、労使委員会を設置し決議することによって労働基準監督署への届出不要。労使委員会の積極的に設置・活用を促す。

まとめ

裁量労働時間制の法改正は、あくまで検討段階ではありますが、現行法でも適切な運用を行うため、企業側・労働者側ともに制度の理解を深める必要性があると考えます。

そのためにも、事業主や担当者は、裁量労働時間制の対象労働者への説明が出来るようにしていきましょう。

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